本記事は、全日本不動産協会大阪府本部が、2025年3月1日に開催した「教えます㊙セミナー 信頼できる不動産業者の見分け方 〜わるい不動産業者にだまされないために〜」のプログラムをテーマごとに書き起こしたものになります。一般消費者の方だけでなく、これから不動産業での独立開業を目指している方にも役立つ内容となっておりますので、是非ご覧ください。
セミナー開会の挨拶
今回のセミナーは、当協会に苦情が寄せられた事例をもとに「◯◯新喜劇」をイメージした分かりやすい不動産セミナーを皆様に聞いていただきたいと思います。一般消費者の皆様には、本日のセミナーを通して不動産の知識を持っていただくことで、トラブルを未然に防ぎ、安心、安全な取引をしていただきたいと考えております。
世の中には残念ながら、不動産知識の乏しい消費者に近づき、消費者を騙してお金を奪い取る悪い不動産業者がいます。本日のセミナーでは、実際の事例をもとに8つの例を挙げて、不動産の取引上の注意点をご説明させていただきます。難しいイメージのある不動産を、今回のセミナーを通して、コミカルな掛け合いでわかりやすく説明させていただきますので、このセミナーをお楽しみいただき、有意義な時間にしていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
テーマ③:定期建物賃貸借契約の罠
それでは、3番目のテーマ「定期建物賃貸借契約の罠」にいきたいと思います。相場10万円を3万円で掲載し、3ヶ月だけの定期建物賃貸借契約を締結した。3ヶ月経った時に更新は出来るのでしょうか?
客:(ガラガラ)こんにちは。
悪徳不動産業者:いらっしゃい!
客:表の広告を見たんですけど、大阪のど真ん中で月3万円、駅チカで、敷金礼金ゼロで、有名人も住んでいるマンション、これまだ空いていますか?
悪徳不動産業者:お客さんラッキーや。運がええわ。その物件、昨日キャンセルになって、でも問い合わせもいっぱいあるからな。すぐ契約書にサインして。保証会社の費用・火災保険・仲介手数料・防虫費用・鍵交換代・エアコンのクリーニングとハウスクリーニング代の合計15万円。安いやろ。すぐ契約しましょうか。
はい。その後なんですけれども、お客さんは居心地もとても良くて、家賃も安かったので、そこに住んでいました。そして、気が付けば一瞬で3ヶ月が経ちました。その頃、悪徳不動産屋がやってきます。
悪徳不動産業者:ピンポーン。お客さん、3ヶ月経ったんで、出て行ってもらわなあかん。全部空にして出ていってや。
客:ちょっと待ってください。一体何の話ですか。月3万円でずっと住めると思っていたのに。
悪徳不動産業者:月3万円は3か月だけやねん。契約書にも、重要事項説明書にも書いてるやろ。このまま住みたかったら、礼金10万と毎月の家賃10万円で再契約してもらわなあかん。契約の時に説明したやろ。
客:そんな話聞いてなかったし、今更引っ越しなんてすぐできませんよ。どうしたらいいんですか。
悪徳不動産業者:あんた、子供みたいなこと言うたらあかんわ。契約書でも重要事項説明書にも、聞きましたって署名捺印してるやん。
まんまとやられてしまいましたね。こんなことが許されるんでしょうか。このケースもほとんどが泣き寝入りで苦情は上がってこないんですよね。不動産保証協会としても書面が整っている以上はなにもできないのですが、どうしたらよいのでしょうか。石那田先生のご意見を聞いてみましょう。
このテーマについて未来総合法律事務所 石那田弁護士の見解
まず、不動産賃貸の賃借人を保護するために借地借家法という法律があります。一般的に、「賃借人が強い」と言われるのはこの法律のおかげです。そして、借地借家法においては、契約期間が満了しても、原則として賃貸人は正当な理由がなければ契約更新を拒絶できません。
そもそも、借地借家法において、契約更新がない定期建物賃貸借契約の方が例外的なものです。そのような契約は書面ですることが義務付けられています。また、借地借家法38条2項には、賃貸人が賃借人に対して「契約の更新がなく、期間の満了により契約が終了すること」を書面により説明することも義務付けられています。そして、最高裁判例によって、賃貸借契約書と事前説明書面はそれぞれ別の書面でなければならないとされています。
本件では、重要事項説明書が、借地借家法38条2項の契約の更新がないことの事前説明の書面となりえるかどうかが問題となります。本件で重要事項説明書の具体的内容や賃貸人から仲介業者に対して委任内容が不明であるため、確定的な意見を述べることができませんが、仮に仲介業者が、重要事項説明書で定期建物賃貸借契約である旨を説明しただけというのであれば、借地借家法の要件を満たさず、更新がない旨の約定は無効となると考えます。
これは、基本的に賃貸人が行うべき借地借家法38条2項の事前説明と仲介業者が行うべき重要事項説明は、それぞれ別個の説明義務の履行であり、そのような義務を果たすべき主体も異なっているからです。
業者の方が先程「重要事項説明書にも書いてある」と言いましたが、重要事項説明書にどこまで詳しく書いてあるかですね。単に「契約更新しませんよ」とか「期間満了で更新しません」と書いてあったとしても、借地借家法はかなり厳しいですから、それではダメなんですね。

ただし、一定の要件を満たせば、重要事項説明書に事前説明の内容を記載し、重要事項説明とあわせて説明することで事前説明とすることも可能ではないかと考えます。例えば、国土交通省の通知によれば、賃貸人から代理権を授与された宅地建物取引士が、重要事項説明を行うことで、事前説明書の交付及び事前説明を兼ねることができることになっています。ですが、その場合は重要事項説明書に契約の更新がないことだけでなく、借地借家法38条2項の事前説明書も兼ねることや、宅地建物取引主任が賃貸人から代理権を授与されて事前説明をすることが表記されていることが必要です。
ですから、そういう記載が重要事項説明書にまず記載されてるかどうかですよね。国土交通省の通知があったからって、必ず裁判のルールになるわけではないですけど、おそらく裁判所の判断も、国土交通省の通知と同じような判断になるんではないかと思います。ただこれは判例がないのでちょっとわかりませんが、そうなるのではないかと思います。
ただ、業者によっては、よく国土交通省の通知についても知っていて、事前説明書にそこまで書いている業者もいるかもしれません。顧客側として、それでも裁判で戦いたいという場合には、本当に賃貸人から宅地建物取引士に対して、代理権を授与したかの証拠があるかないかということを追求した方がいいと思います。
もしそういった委任状がなければ、代理権を授与していないわけですから、業者側は代理権が授与されたことを立証することが難しくなって、お客さんが勝つ可能性が高くなってきます。その点についても「重要事項説明書に書いてあるからダメや」と思うのではなくて、委任状があるんですかとか、そういったことを追求して戦われた方が良いと思います。
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