全日本不動産協会 大阪府本部 なにわ南支部
栄興土地株式会社 代表取締役
界外 典子さん
母が創業した会社
私は母が創業した不動産会社を継ぎました。いわゆる2代目ですね。私の父は早くに亡くなりまして、母が代わりに働きに出ていました。母は事務員募集のチラシを見て不動産会社に就職し事務員として働いていました。そこの会長さんに先見の明があり「これからは不動産も女性の時代だから宅建を取得しなさい」と母に命じ、宅建を取得した母は、営業がおもしろくなり成績も上がり事務員から一転、営業部長として働いていたようです。
その後、母が43歳の時に不動産会社を設立するということで、その手伝いをはじめました。私はそれまで建築設計事務所に勤務しながらインテリアの学校にも通っていました。当時まだ私も22歳だったので、会社を継ぐつもりは特になく、結婚前の腰掛けくらいの気持ちでした。
自分の意思とは関係なく母の会社を手伝い始める
実は、私が勤務していた建築事務所が、母が独立した際の事務所を設計しまして、母と勤務先の社長が知人関係だったんですよ。その結果、私は勤務先の社長から「うちを辞めて、当然、お母さんの仕事を手伝うんやろ?」といきなり言われまして(笑)「当然なんや」と驚きましたよね(笑)自分の意志とは関係なく、半ば強制的に勤めていた会社を退職することになりまして、母の会社を手伝うことになったわけです。
そこから母の仕事を結局30年くらい手伝いましたかね。結婚・出産・離婚を経験し、会社に戻ってきてからは営業にも出ていました。実は10年近く母と「いつ交代するか」と話はしていたんです。私としては営業に出ていたので、社長の肩書があると、値段交渉の際に「社長に聞いてみないと…」と逃げる手立てがなくなるな、やりにくいなとかそんなことも考えつつ、いずれはどうにかしないといけない問題だなという認識はありました。
継ぐことの難しさ
子供が大きくなって落ち着いてきましたし、色々と検討した中で5年前に母の会社を継ぎました。今は母が手伝ってくれていますね。継いでみて、母の苦労を改めて感じていますね。娘にも仕事を手伝ってもらっていますが、私が母を手伝い始めた頃と環境は大きく変わっていますから、娘に積極的に継いでほしいとは素直には思えないのも実情ですね。
例えば、地域・街の不動産屋としてお客様との信頼関係を母が作ってきたことで成り立っていた商売ですけど、私が代替わりしたように、お客様も親から子へ、孫へと世代が変わっていきます。お客様の住む場所や関係性が変わっていくと、昔のように「今まで通り」と商売が進まないこともでてきますから。継いだら安泰ということではないんですよね。この辺りは世襲の難しさだなと思っています。もちろん娘本人が自ら「やりたい」と言えば別ですが、今のところは「継ぎたくない」と言っていますね(笑)