全日大阪 広報メディア

私の不動産独立ストーリー

不動産業で感じた弱者への風当たり|髙橋 育子さん

2023年7月11日

全日本不動産協会 大阪府本部 大阪南支部
株式会社すまいる 代表取締役
髙橋 育子さん

宅建業との出会い

私はもともと一般的な金融機関でOLをしていました。父親は銀行員だったんですが、銀行を辞めて不動産業を開業したんです。父と母が宅建取引士を取得した時に「お前には宅建は取られへんやろ」みたいなこと言われまして(笑)勤務していた会社が自己啓発を推奨していたこともありOLしながら勉強して宅地建物取引士を取得しました。

その後、父の会社が忙しくなりましたので、勤めていた会社を退職して不動産業界に入りました。子育てもしていたので、父の会社では契約時の立ち会いや重要事項説明など宅建支援者として働きました。

不動産業に感じた違和感

独立に至る背景として、当時の不動産業界に対する違和感があります。日本ではほとんどの場合、女性が家事をしたり育児をしたりすることが多く、一般的に女性の方が家の中で長く過ごされますよね。でもお客様が来られた時は、スタッフは男性に向けて喋ることが多いんです。

配偶者の方が来られていてもお名前でなく「奥さん」とお呼びかけされる。背景としてローンの話だとか支払い方法だとか主にそういうことがメインの話題になるということもあるんですけどね。ただ、ご購入後は奥様がキッチンの色などをお選び頂くのですが、やはり商談中は女性の話題は出ることが少なく、どうしても男性主体にお話をされることに違和感があったんですよね。

それに女性のお客様は男性に対して様々な細かい事情を話しづらいこともあって、実際に男性スタッフのいない時間にお話に来られて、そこで家庭の事情をこっそり教えて頂くということもありました。それで不動産業界は女性のお客様にとって色々と話しづらい業態なんだということをつくづく実感したんですよね。

女性が不動産を買いたいという時も、銀行は独身の方に対して「ご主人は?」と聞いたり、働かれていても保証人を求められたりと、女性が不動産を購入したり借りることが本当に難しいと感じる機会が度々ありました。

弱者の方をサポートするために

あとは、私の息子が障がいを持って生まれまして、障がい者に対する空気感や、生き辛さを実体験として感じていることも大きいんですよね。息子だけでなく、他の親御さんとも接する中で、本当に障がいのある方がいらっしゃる家庭の大変さが分かるんです。私自身も両親をはじめ、周りの大勢の方からサポートして頂いて数々の困難を乗り越えることができました。その恩返しをしたいという気持ちもあって、ヘルパーの資格も取りました。

資格をとった後は、父の会社で働きつつ休みの日など時間調整しながら介護業界でも働き始めました。その時に、私が不動産の仕事をしていたこともあって、家に関する悩みもお聞きすることがあったんです。例えばローンの返済に苦労しているとか、バリアフリーの家が良かったけど後から改装するのは大変だとか。そんなことが続いていたので「自分でも何かお手伝いできることはないか」と考えはじめました。

障がい児が生まれると、どうしても家庭不和になったり離婚されるケースが多かったりします。そうなると母子家庭になってしまって、住居に対する苦労とか障がい児の子供がいるために働けないなど、私の友人の中にもそういう状況の方が多いんですね。

障がいを持つ家族の方の住宅事情の大変さということで言えば、知的障害の方でちょっと大声を上げるとその賃貸住宅で更新を断られるとか、暴れ回って賃貸住宅壊しちゃって文句言われるとか、一戸建てを買ってもご近所から苦情が出て引っ越さざるを得ないとかそんなケースもたくさんありまして。やっぱり女性目線でのサポートが大事だなと感じたんです。

社会の風当たりはまだ強い

そんな経験と流れから、女性の方や弱者の方、障がい者の方などを中心にサポートできる会社を設立しようと思い独立しました。

私が独立する時も女性への風当たりの強さを感じたんですよね。創業融資を受けたいと銀行に行った時も夫の収入を先に聞かれまして、なんでそんな夫の収入を聞かれなあかんねんっていう気持ちになったり・・・そういう創業融資を受けるだけでも女性の創業はなかなか大変なんだと思いましたね。結局、融資は借りずに開業しましたが(笑)

今も仲介がメインですが、障がい者のグループホームや介護事業所の立ち上げとか、そういうお手伝いを多くさせて頂いているんですけど、世間の風当たりはまだまだ厳しいです。開業した時よりはかなり緩くなっているとは思うんですけど、オーナー様がはっきり「障がい者事業所はお断り」などとおっしゃったり、まだ理解が進んでいないと感じています。

そこで士業や福祉業界の方々と協力して安心して運営できる場所探しなどの開業サポートの仕組み作りも始めています。今よりもさらに世の中の理解が進めばいいなと思っています。

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