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不動産セミナー書き起こし

【弁護士の見解】一棟売りのマンションや区分所有の投資用マンションのレントロール改ざん|信頼できる不動産業者の見分け方セミナー

2025年8月31日

本記事は、全日本不動産協会大阪府本部が、2025年3月1日に開催した「教えます㊙セミナー 信頼できる不動産業者の見分け方 〜わるい不動産業者にだまされないために〜」のプログラムをテーマごとに書き起こしたものになります。一般消費者の方だけでなく、これから不動産業での独立開業を目指している方にも役立つ内容となっておりますので、是非ご覧ください。

セミナー開会の挨拶

今回のセミナーは、当協会に苦情が寄せられた事例をもとに「◯◯新喜劇」をイメージした分かりやすい不動産セミナーを皆様に聞いていただきたいと思います。一般消費者の皆様には、本日のセミナーを通して不動産の知識を持っていただくことで、トラブルを未然に防ぎ、安心、安全な取引をしていただきたいと考えております。

世の中には残念ながら、不動産知識の乏しい消費者に近づき、消費者を騙してお金を奪い取る悪い不動産業者がいます。本日のセミナーでは、実際の事例をもとに8つの例を挙げて、不動産の取引上の注意点をご説明させていただきます。難しいイメージのある不動産を、今回のセミナーを通して、コミカルな掛け合いでわかりやすく説明させていただきますので、このセミナーをお楽しみいただき、有意義な時間にしていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

テーマ⑦:一棟売りのマンションや区分所有の投資用マンションのレントロール改ざん

では7番目のテーマにまいります。「一棟売りのマンションや区分所有の投資用マンションのレントロール改ざん」です。レントロールは「利回り」という意味ですね。この利回りを改ざんして販売資料を作成、また融資用の資料として銀行等に提出されているが、実際はその部屋には入居していない場合もあるんですね。

悪徳不動産業者:いらっしゃいませ。

客:ちょっと年金代わりになるような利回りの良い物件を探してるんですけど、そんな美味しい話ないですよね。

悪徳不動産業者:お客さん、ええ時にきはりましたわ。なかなか僕らも見ない物件が出てますね。月々7万円で賃貸しているマンションが、12%の利回りで物件価格も700万円ですわ。毎月7万円入ってくる訳ですから、年金代わりにもなりますし、どうですか?

客:そんなん信じられへんですね、今時12パーセントで回るなんて。本当にそんな物件あるんですか。あるんやったら、私お金ないんですけど、全額ローンで買えますかね。

ところが、実際は4万円位でしか貸せないボロ物件で、しかもSUUMOには400万円で登録されている様な物件でした。それを700万円で買わせようとしている、というストーリーですね。続きをお願いします。

悪徳不動産業者:お客さん、そんなに欲しいんやったら、ちょっと待ってくださいや。

これとこれとこれとこれ、5軒はいけますわ。資金計画のことやねんけども、銀行さんは、ちょっと難しいかな思いますね。でも信販系でローン組むんやったら、この物件もみんな買えますよ。ぐへへへへへ。(会場笑)

安い物件をいかにも高利回りな物件であるかのように仕立て上げ、どんどん買わせるんですけれども、元々入居者がいてるわけでもなく、募集しても言われた家賃では入居者はあらわれず、ローンの返済だけが膨らんできて、途方に暮れている頃合いを見計らったかの様に、タイミング良く悪徳不動産業者の関連会社の営業が「騙されやすい人名簿」「騙した奴リスト」に載っているお客様に、まずは電話をかけてくるんですね。

関連会社の悪徳営業:もしもし、投資用のマンションを買取っている会社なんですが、こちらに名簿が回ってきまして、お客さんとんでもない物件をいくつもお持ちなんですね。知り合いの銀行に聞いたらもう債務超過で、このままやったら破産してしまいますよ。なんやったら、うちの関連会社で物件の買い取りをしますから、すぐに売却しませんか?もし良かったら明日そちらに伺います。

物件を買い取ってくれるなんて、喉から手が出るような話です。もう、救世主が現れたかのように悪徳営業マンを迎えるのですが・・・。

関連会社の悪徳営業:早速、契約書を用意してきました。この700万円で購入されたAマンションは400万円で、600万円で購入されたBマンションは350万円で買取ってもらえるように、買主の業者さんには話してきました。決済は今月の末で現金決済の予定です。

客:そんなに安くこのマンション売ったら、借金残りますし。もしかして私、不動産屋さんに騙されてたんですかね。

関連会社の悪徳営業:いやいや、あなたも納得して買ったんですから。騙された訳では無いですよ。ただ入居者が入らないと、管理人返済で毎月30万円ずつぐらいの吐き出しになるでしょう。破産する前に処分したらどうですか?と言う事で私は協力してるんですよ。実は買主さんからこの通り、手付金75万円の小切手を預かってきました。これで良かったら契約の証に、この小切手持って記念写真を撮りましょう。

<<はいポーズ。カシャ!>>

関連会社の悪徳営業:良かったですわ~。私もこれで安心して大阪に戻れます。なんやったらお客さん、他の物件も全部、私が売りさばきましょうか。

とんだ救世主なんですが、焦らせて、煽って、契約書に署名させる。これを「押し買い」と言います。先生、すごい話がでてきましたが、コメントをお願いします。

このテーマについて未来総合法律事務所 石那田弁護士の見解

まず、消費者側にかなり厳しいことを言うようですけれども、投資の場合、その損得は自己責任ですので、原則としてその損失に関するクレームは認められにくいということはご理解下さい。裁判所もかなり厳しく判断します。リスクのない投資はありません。

賃貸物件を余剰の資金で購入するのであれば、まだ分かるのですが、金融機関から借りてまで購入した場合は、賃借人がいなくなったとしても金利を含めた毎月の返済がのしかかります。

本件では信販系からも借入しているということなので、その金利は決して低いものではないので、その負担は甚大です。また修繕などのため予想以上の経費がかかってしまうということもあります。従って、不動産取引に関して知識や経験がない方は、安易にそのような投資をすべきではないということを大原則としてご理解ください。

それでも、投資マンションを業者から購入してしまったような場合、投資勧誘の際に業者側に説明義務違反が認められるようであれば、不法行為又は債務不履行に該当するとして損害賠償等の請求や、詐欺や錯誤に該当するとして契約の取消しを主張することが考えられます。そして、販売資料の利回りに関して改ざんがあり、そのことで顧客を騙していたと評価されるような場合は、改ざんの内容や程度にもよりますが法的には損害賠償請求や契約の取消しが認められる可能性はあります。

しかしながら実際の裁判では、例えば、業者側から、利回りはあくまでも予測にすぎないという主張や、仮に家賃収入状況が実態と異なっていたとしても、それは銀行から多くの融資を受けるためであり、そのことは顧客も納得していたなどといった主張が考えられます。そもそも改ざんの立証自体が困難なことも多く、通常、説明義務違反、詐欺、錯誤に関する主張立証は、かなりハードルが高いです。また仮に損害賠償請求が認められたとしても、消費者側にも過失があるということで、過失相殺により請求額が減額される可能性もあります。

次に押し買いに関してですが、そのような不良な投資物件につき、損失を確定するため売却して損切りするという発想自体は、程度によりますけども必要な場合はあると思います。ただ、押し買いをされそうになったら、その流れに巻きこまれるのではなく、一旦は冷静になる時間を取った上で、少なくとも他の業者からも相見積もりをとるなどして慎重に判断すべきです。

また、宅建業法(31条1項)も、宅地建物取引業者に「誠実義務」を課しておりますので、押し買いのような不当な勧誘行為は、宅建業法違反となる可能性もあります。そして、押し買いの内容によりますが、先ほどの説明だと詐欺とは言えないかもしれませんが、業者側が不合理な説明をして、その説明内容が詐欺行為であるとまで認められるのであれば、詐欺などによると取消しや損害賠償請求も考えられます。但し、詐欺の主張立証は極めてハードルが高いということはご理解下さい。

今申し上げた民法上の責任、消費者契約法というのがありまして、消費者に関しては情報とかが少ないわけですから、そういった消費者を保護するための法律というのがあります。その法律にはかなり消費者を守るためにいろんな法律があります。消費者の不安を煽って困惑させて、正当な理由もないのに契約をさせたと評価されるような場合は、契約の取り消しが可能です。

押し売りがこれに該当する可能性もあります。ただ正当な理由がないのに必要ないものを売らせた、買わせたといったことがその場合ですから、損を確定するために売ったものが「正当な理由がない」とまで言えるかどうかは微妙な判断かと思います。

また、前述した販売資料の改ざんにより投資マンションを購入した元々の売買契約に関しても、消費者契約法上の重要事項についての「不実告知」に該当することを理由に、契約の取消しの主張が考えられます。

しかしながら、この消費者契約法というものは、あくまでも消費者を守るためのものです。先ほどのような、一棟マンションを買うということは、一棟のマンションで賃貸業を営むわけですよね。その賃貸業を営むような場合は、果たして消費者と言えるかっていうのはかなり微妙になると思いますから、争われると思います。つまり、消費者ではなくて事業者ではないかという話ですね。おそらく業者側は「消費者ではない」とかなり強く主張してくると思います。その場合は、強力な消費者契約法が使えない可能性もあります。

消費者として認められたとしても、不安を煽って困惑させたことや正当な理由がないのに契約を締結させたこと、また、重要事項の不実告知に関する主張立証は、いずれもハードルも高いことはご理解下さい。

仮に業者側に対する請求が認められたとしても、詐欺のようなひどい行為をするような業者は、早晩倒産しているといったリスクも考えられます。そのような場合は、請求ができなくなりますので、不良な賃貸物件と借金だけが残ってしまうということにもなります。従って、不動産取引に関して知識や経験がない人は、安易にそのような投資をすべきではないことを肝に銘じて下さい。

また本件のような事案以外に、サブリース業者が一括して買主から賃借りして、さらに転貸することで家賃保証や管理の手間が省けるということを宣伝して、投資マンションの購入を勧めたりするケースもあります。その場合、サブリース業者との賃貸借契約については借主に有利な借地借家法が適用されることから、貸主にとって有利な契約条項が無効となったり、また、賃貸借契約の解除が極めて困難であること等の理由で紛争となっている事案もありますのでご注意下さい。

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