全日本不動産協会 大阪府本部 北大阪支部
株式会社rety-R 代表取締役
王鞍 拓真さん
不動産で独立なんてしたくなかった
私はもともと独立する気はまったくなかったんですよ。する気がないというより、したくなかったという方が正しいですね。私の父は建設業で開業していたんですが、結果的に失敗してしまって、その後も色々見ていたので。と言いつつ、私も結局9年前に不動産業で独立したんですけど(笑)
私はもともと大工になりたくて、高校卒業後は大工として働いていました。ですが給料が少なくて生活がまともにできなかったんです。それで学生時代にバイトしていた引越業者に戻りました。でもアルバイト時代には感じなかった変化がありまして、1つ目は働き方。大工もそうですけど、引越業者は怪我をしたら働けなくなってしまいます。そうなると収入がなくなってしまいますから、このまま長く続けていくことは難しいなと思い始めました。
2つ目は、勤めていた引越の会社が上場を目指して準備を始めたので、その過程で労働環境や収入面に変化がありました。働く環境や時間なども法律や社内規定をもとにクリーンに変えていく必要があるので、私達は働く時間が減ってその分収入も減ってしまいます。そこまで手取りが多かったわけでもないですから、これは困ったなと当時は思っていました。そんなことを考えているときに、担当したお客様で不動産業者の方から「うちに来ないか?」と誘われたんです。
初月の手取りが100万円を超える
それで不動産業者に転職して仲介の仕事に就きました。21歳の頃です。転職先は営業マンが1,000人はいるような大手の会社だったんですけども、入社してすぐに社内で10位くらいの成績になりまして、手取りもいきなり100万円を超えたんです。もうね、肉体労働をしていたことが虚しく感じてしまう出来事でした。「一体なんだこれは」と「不動産ってすごいな」と思いました。
本当に入社してすぐだったので、先輩に言われるがまま仕事をしていたらスルスルと契約が決まりまして。今振り返ると、4月だったので繁忙期だったことと、私自身けっこう友達や知人が多いので、依頼してくれる人が多かったのが要因だと思います。あとは始発で会社に行って始業まで物件を覚えて、終電まで仕事をしていたのでそういう努力はしていましたね。結果的にその後も成績は上位をキープできていました。

しかし当時は本当になにも分かっていなくて、敬語もできていませんでした。なんなら一人称は「俺」で、語尾に「ッス!」ってつければ敬語だと思っていましたから(笑)先輩にはそれは怒られましたが、それでも入社してからのサポートだったり、ご指導だったり本当にお世話になりました。入った会社も良かったと思っていますね。
勤務先の上場準備、外に飛び出す
そんな感じで仲介の仕事に邁進していたんですけども、上場を目指すと(笑)どこかで聞いた話ですが(笑)それまでは休まずゴリゴリ働く、という感じの会社だったんですけど、これからは休みも増えるし給与形態も変わる。当たり前ですけどコンプライアンスが厳しくなるのでリーガルチェックなんかも強化されて、契約までのスピードもそれまでより遅くなるわけです。
もちろん適正に適法に仕事は進めていくのが当たり前なんですが、やっぱり現場からすると辛いわけです。結果として給与も下がっちゃいますから。それで「転職か独立か」と考えた時に「転職してまたイチからか・・・」と思ってしまいまして。だったら「今やっている業務の延長を自分でやったほうがいい」と思い、独立することにしました。
最初にお伝えした通り、私は独立意向が全くなかったわけですから、本当になりゆきですね。今はスタッフも20名ほどいて、みんなで一生懸命頑張っています。独立してみて思うのはメリット・デメリット半々かなと思います。良い面では収入が増えたりしますけど、その分リスクもストレスも大きい。だから当初の気持ちは今でもあまり変わらないんです。生まれ変わっても「絶対独立しよう」とはならないかもしれません(笑)